深夜のドライブが好きだった。人の少ない道を、音楽を流しながら走る。それだけで頭の中がすっきりする気がした。
その夜も、仕事のストレスを発散しようと車を出した。目的地は決めず、山の方向へ走った。
深夜二時頃、細い山道に入ったとき、ヘッドライトに二人の人影が浮かんだ。
女性と、子ども。
女性は和傘を差していた。白い着物を着ている。子どもは浴衣姿で、女性の手をぎゅっと握っている。
空は晴れていた。星がよく見えた。雨は降っていない。
徐行しながら近づいた。窓を少し開けると、シンシンと静まり返った山の空気が入ってきた。虫の声も聞こえない。
すれ違う瞬間、子どもがこちらを見た。
目が合った。子どもは笑っていた。
ルームミラーで確認した。誰もいなかった。
来た道を戻ったとき、道は一本道だった。二人が消えられる場所はどこにもなかった。