終電に乗り込んだのは、ドアが閉まる三秒前だった。
滑り込むように乗り込んで、ようやく一息ついた。終電後の車内は空いている。そう思って顔を上げたとき、気づいた。
最後尾の席に、誰かが座っている。
おかしい。乗り込む前にホームを確認した。誰もいなかった。私が最後の乗客のはずだ。
その人物は窓の外を見ていた。黒いコートを着た、性別のわからない人物。髪が長い。肩まで垂れている。
電車が動き出した。次の駅まで約十分。
気にしないようにしようと思ったが、どうしても目が行く。その人物がまったく動かないのだ。揺れる車内で、微動だにしない。
五分が経った頃、その人物がゆっくりと顔をこちらに向けた。
顔がなかった。
のっぺりとした、白い楕円形。目も鼻も口もない。
次の瞬間、車内の照明が一瞬消えた。
また点いたとき、最後尾の席は空だった。
私は次の駅で降りた。タクシーで帰った。