入院して四日目の夜、眠れなくて廊下を歩いていた。
非常口のドアが少し開いていた。中から風が入ってきた。
何気なく入ると、屋外の階段だった。上に続いている。登っていった。
屋上に出た。
夜風が気持ちよかった。街の明かりが見えた。
先客がいた。
フェンスの近くに、白い病衣を着た老人が立っていた。こちらに背を向けて、街を見下ろしていた。
「こんばんは」と声をかけた。
老人は振り返らなかった。
「夜風、気持ちいいですね」
返事がなかった。
しばらく並んで立っていた。気づくと老人はいなくなっていた。いつ消えたのかわからなかった。
翌日、担当の看護師に何気なく話した。屋上に出たこと、老人がいたこと。
看護師の顔色が変わった。
「屋上は三年前から鍵がかかっています。入れないはずです」
「でも昨夜」
「非常口の鍵は、私たちが毎晩確認しています」
その後、私の病室が変わった。理由は教えてもらえなかった。