引っ越してきた最初の夜から、おかしいとは思っていた。

私が住んでいるのは3階建てマンションの最上階、3階の305号室だ。

なのに毎晩3時頃になると、上から足音が聞こえてくる。

最初は「屋上に誰かいるのかな」と思った。でも雨の夜も、台風の夜も、同じ時間に同じ足音がする。

足音は一定のリズムで動く。部屋の端から端まで、ゆっくり、ゆっくり歩く。止まる。また歩く。

管理会社に連絡した。「うちは3階建てです。上に部屋はありません」と言われた。わかってる、だから連絡してるんです、と言いたかったが、「調査します」という言葉を信じて待った。

一週間後、「屋上を確認しましたが異常はありませんでした」という連絡が来た。

足音は続いている。

先月、廊下で向かいの部屋の老人と話す機会があった。この建物に長く住んでいる人だ。

「上の足音、気になりますか」と聞いてみた。

老人は少し間を置いてから言った。

「ああ、あれね。昔はもっと大勢歩いてたんですよ。最近は一人になりましたけど」

「……昔は大勢?」

「ここが建つ前、この土地に何があったか知ってますか?」

知らなかった。老人は教えてくれなかった。「まあ、害はないですよ」とだけ言って、部屋に戻っていった。

今夜も、もうすぐ3時になる。